
最近、「ナトカリ比」という言葉を耳にしたことはありますか?
健康や血圧が気になり始めた40〜50代の方、家族のために食事を気にかけている方のあいだで、じわじわと注目を集めている指標です。とはいえ、あるアンケート調査(カゴメ株式会社・2025年)では、「知らない」と答えた人が 約79.7%、「意味まで知っている」人はわずか 6.7%。まだまだ知られていないのが現状です。
でも、このナトカリ比を知ると、「何を食べるか」という食生活の見方がガラッと変わります。減塩だけじゃない、新しい視点で食卓を整えるヒントになるはずです。あなたや大切な家族の健康管理に、ぜひ役立てていただけたら嬉しいです。
ナトカリ比とは? ── ナトリウム・カリウムって何?
ナトリウムは食塩の主成分で、体内の水分バランスや神経・筋肉の働きに関わる必須ミネラルです。しかし摂りすぎると血液中の水分量が増え、血管への圧力=血圧が上がります。
カリウムは野菜・果物・いも類などに豊富なミネラルで、体内で余分なナトリウムを尿と一緒に排出する“お掃除役”として働きます。
ナトカリ比 = ナトリウム量 ÷ カリウム量
この値が低いほど、塩分が少なくカリウムが豊富な食生活を送れている目安になります。

なぜ今、注目されているの?
ナトカリ比の研究は1980年代から世界規模で進んでいましたが、長い間「専門家の指標」にとどまっていました。それが2014年に自宅でも手軽に測れる機器が登場し、2024年には日本高血圧学会が正式な目標値を発表。2025年の治療ガイドラインにも盛り込まれ、ようやく「一般の人が使える指標」になってきたところです。知るなら、今がちょうどいいタイミングです。
ナトカリ比は何の指標になるの?目標値はどれくらい?
ナトカリ比と血圧の間には連続した正の関連があり、ナトリウム単独・カリウム単独よりも、この**”比率”のほうがより強く血圧と関連する**ことが複数の研究で示されています。
日本高血圧学会が示す目標値はこちらです。
| 目標 | 尿ナトカリ比の値 |
|---|---|
| 至適目標(理想) | 2未満 |
| 実現可能目標 | まず4未満を目指す |
日本人の平均は 2.5〜3.5程度 で、目標値をやや上回る人が多いとされています。
高血圧が気になる方へ
「減塩だけ」より**「減塩+カリウム増」の組み合わせ**のほうが血圧低下効果が高いことがエビデンスで示されています。血圧が高めの方・降圧薬を服用中の方は、ぜひかかりつけ医に相談しながらカリウムの摂り方を検討してみてください。なお、腎機能が低下している方はカリウムの過剰摂取に注意が必要です。
また、健康日本21(第三次)では野菜摂取の目標を 350g/日 と設定していますが、現在の日本人の平均は約256g。この背景にも、カリウム不足の問題が隠れています。
ナトカリ比はどうやって測定できるの?
食事から摂ったナトリウムの約90%・カリウムの約70〜80%は尿から排泄されるため、尿検査で測定できます。
- 朝一番の随時尿を採取し、ナトリウム・カリウム濃度を測定
- 医療機関・健診センターで安価に検査可能
- 近年は特定健診に取り入れる自治体も増加
- ナトカリ計(専用機器)なら尿1〜2滴・約1分で測定可能
- 市販の自宅検査キットでも測定できる
※数値は日々の食事や体調で変動するため、週4日以上・異なる時間帯に測定して平均を出すことが推奨されています(日本高血圧学会)。とはいえ、毎週測るのはなかなか難しいもの。まずは年に1回、健診のタイミングや気になったときに確認してみるだけでも十分なスタートです。

「野菜食べてるのに…」のワナ ── カリウムが少ない野菜に注意
💬 管理栄養士のひとこと
私自身、自宅の検査キットでナトカリ比を測ったとき、結果があまり良くなくて驚きました。「こんなに野菜食べてるのになんで?」って。よく読んでみると、私が日常的によく食べていたキャベツ・もやし・レタスといった野菜は、実はカリウム含有量が少ないグループ。「野菜を食べている=カリウムが摂れている」とは限らない、ということを身をもって実感しました。
野菜ならなんでもカリウムが豊富、というわけではありません。特に淡色野菜はカリウムが少ない傾向があります。
カリウムが少ない野菜(可食部100gあたり)
| 野菜 | カリウム量 |
|---|---|
| もやし(りょくとう) | 79mg |
| 玉ねぎ | 150mg |
| キャベツ | 190mg |
| きゅうり | 200mg |
| レタス | 200mg |
| 白菜 | 220mg |
カリウムが豊富な野菜(可食部100gあたり)
| 野菜 | カリウム量 |
|---|---|
| ほうれん草 | 690mg |
| さといも | 640mg |
| 枝豆 | 590mg |
| ブロッコリー | 460mg |
| かぼちゃ(西洋) | 430mg |
| トマト | 210mg |
出典:日本食品標準成分表(八訂)増補2023年
同じ「野菜を食べている」でも、何を食べているかでカリウム摂取量は3〜4倍以上変わることがあります。

カリウムが多い食材と、手間のかからない摂り方
カリウムは水溶性のため茹でると溶け出してしまいます。効率よく摂るには生食・汁ごと食べる・電子レンジ調理がおすすめです。
カリウムを手軽に摂れる食材
| カテゴリ | おすすめ食材 |
|---|---|
| 野菜 | ほうれん草、ブロッコリー、枝豆、かぼちゃ、アボカド |
| 果物 | バナナ、アボカド、メロン(生食でそのまま) |
| いも類 | さといも、さつまいも |
| 飲み物 | トマトジュース(無塩)、豆乳 |
| その他 | 納豆、わかめ(乾燥で常備OK) |
今日から手軽にできる3つの習慣⭐️
- 朝食や間食にバナナやトマトジュースをとる
- みそ汁にほうれん草・さといも・かぼちゃを足す
- 野菜350gは緑黄色野菜を中心に設計する
カゴメの調査でも、「ナトカリを食生活に取り入れたい」と答えた人の理由1位は**「手軽に実践できるから」(76.9%)。減塩が続かない方でも、「野菜・果物を足す」加算思考**なら取り組みやすいはずです。

まとめ
- 「ナトカリ比」を知っている人はまだ約2割以下。研究の歴史は長いが、一般への認知はこれからの指標
- 減塩だけでなく、カリウムを増やすことで血圧をより効果的にコントロールできる
- 目標は尿ナトカリ比4未満(理想は2未満)。医療機関・健診・自宅検査キットで確認できる
- 「野菜を食べている」だけでは不十分。何の野菜を食べているかがカギ
- バナナ・無塩トマトジュース・ほうれん草など、今日から始められる食材を活用しよう
「減塩は大事だとわかっているけどしんどい」という方は、まずカリウムを足すところからスタートしてみてください。食べることを楽しみながら、血圧を整える食生活に少しずつ近づいていけますよ。
参考資料
- カゴメ株式会社「全国一斉ナトカリ意識調査」(2025年)
- 日本高血圧学会「尿ナトリウム/カリウム比(尿ナトカリ比)に関するコンセンサスステートメント」(2024年)
- 東北大学東北メディカル・メガバンク機構 プレスリリース(2020年)
- 厚生労働省「健康日本21(第三次)」
- 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」

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