
ぐんぐん伸びるツルや葉っぱを見ながら、「今年の夏野菜も楽しみだなあ」と、収穫を心待ちにして畑のお世話をしていたある日。
ふと手を止めて畑を見渡すと——あれ? 咲いている花が、黄色ばっかり。トマトも、ゴーヤも、スイカも、カボチャも、まるで示し合わせたみたいに黄色い花をつけているんです。
「夏の花ってこんなに黄色かったっけ?」「夏野菜は体を冷やすって聞くけど、この黄色も関係あるのかな?」
“夏野菜は体を冷やす”——これは前から知っていました。ただ、その理由までは知らないまま。黄色い花をきっかけに調べてみたら、花の色の理由は意外なもので、そして長年知らなかった「冷やすワケ」も、やっと分かったんです。
今日は、畑の黄色い花の謎からひもとく、夏野菜の「クールダウン栄養学」。管理栄養士の視点で、じっくりお話しします。

夏の畑の花はどうして黄色が多いの?
まず、黄色い花の謎から。
調べてみると、理由は「体を冷やすため」ではなく、受粉のためでした。
花にとっていちばん大事な仕事は、虫に来てもらって花粉を運んでもらうこと。そして、受粉の主役であるミツバチは、黄色から青の色がよく見えるのだそうです。つまり黄色い花は、ミツバチに「ここにいるよ!」とアピールするのに、とても有利な色なんですね。
面白いのは、うちの畑の顔ぶれ——トマト・ゴーヤ・スイカ・カボチャを見てみると、ゴーヤ・スイカ・カボチャはウリ科、トマトはナス科。科がちがうのに、そろって黄色い花を咲かせているんです。それだけ「黄色」が、夏の虫たちに選ばれてきた色ということなのかもしれません。
もちろん、例外もあります。同じ夏野菜でも、なすの花は紫、ピーマンの花は白。「夏野菜=ぜんぶ黄色」ではないところも、畑を眺める楽しさのひとつです。

でも、「夏野菜が体を冷やす」のは本当
「なんだ、花の色は関係なかったのか」——と、少し拍子抜け。
でも、夏野菜が体を冷やすこと自体は、やっぱり本当なんです。そして、私がずっと知らなかった”その理由”が、ここでようやく見えてきます。
では、何が体を冷やしているのでしょうか?
体を冷やす正体は、”水分”と”カリウム”
答えは、夏野菜にたっぷり含まれる水分とカリウムです。
まずは、うちの畑の4つの野菜で、数値を見てみましょう(可食部100gあたり)。
| 野菜 | 水分 | カリウム |
|---|---|---|
| トマト | 約94% | 210mg |
| ゴーヤ(にがうり) | 約94% | 260mg |
| スイカ | 約90% | 120mg |
| カボチャ(西洋かぼちゃ) | 約76% | 450mg |
(出典:日本食品標準成分表2020年版〔八訂〕)
トマトとゴーヤは、なんと9割以上が水分。スイカも約9割です。夏野菜が「食べる水分補給」といわれるのも納得ですね。

水分が体を冷やすしくみ
夏野菜の豊富な水分は体液を補い、汗をかきやすい状態をつくってくれます。汗が蒸発する際に体表の熱を奪う「気化熱」によって、体温が上がりすぎるのを防いでくれるのです。
打ち水をすると涼しくなるのと同じ原理が、私たちの体の中でも働いている——そう考えると、なんだか面白いですよね。
カリウムの働き——ナトリウムとの名コンビ
カリウムには、体内の余分なナトリウムを尿と一緒に排出するのを助ける働きがあります。細胞には「ナトリウム・カリウムポンプ」という仕組みがあり、この2つのミネラルはいつもペアでバランスを取り合っているのです。だからこそ、塩分(ナトリウム)を減らすだけでなく、カリウムを摂ることも大切——まさにナトカリ比の考え方ですね。
余分なナトリウムと一緒に水分も排出されるので、カリウムはむくみ対策にもつながります。夏のむくみが気になる方には、うれしい働きです。
どのくらい摂ればいいの?
「日本人の食事摂取基準」では、カリウムの目標量は成人女性で1日2,600mg以上、男性で3,000mg以上とされています。
たとえば中玉のトマト1個(約150g)で、カリウムは約315mg。**女性の1日の目標量の約12%**を、トマト1個でまかなえる計算です。畑で採れたてのトマトをかじる——それだけで、ちゃんと体の役に立っているんですね。
東洋医学でも、夏野菜は「体を冷やす」
面白いことに、この「夏野菜は体を冷やす」という考え方、東洋医学(薬膳)の世界では昔から常識でした。
陰陽の考え方では、食材は「体を冷やすもの(陰)」と「温めるもの(陽)」に分けられます。冷やす野菜には、こんな傾向があるとされています。
- 夏が旬である
- 地上に実る(ぶら下がってなる)
- 水分が多い
- 南国生まれ・色が淡い
トマト、ゴーヤ、スイカ……まさに夏の畑の顔ぶれそのものです。昔の人は成分表なんて持っていなかったのに、経験から「夏の野菜は体を冷やす」と見抜いていた。その経験知が、現代の栄養学(水分とカリウム)と一致するのが、なんとも面白いところです。
黄色い花仲間の”はぐれ者”——カボチャ
ところがここに、ひとつ例外がいます。カボチャです。
同じ黄色い花を咲かせる夏野菜なのに、カボチャだけは薬膳で「体を温める側」とされているんです。
先ほどの表をもう一度見てみると、理由が見えてきます。カボチャの水分は約76%と、トマトやゴーヤ(約94%)に比べてぐっと少なめ。実がぎゅっと詰まって、デンプン質が豊富です。だからこそ、冬至にカボチャを食べて体を温めるという風習が、昔から続いてきたんですね。
黄色い花の仲間なのに、ひとりだけ温めチームの”はぐれ者”。畑で咲くカボチャの花を見る目が、ちょっと変わりませんか?

40〜50代が気をつけたい、”冷やしすぎ”ない摂り方
さて、夏野菜が体を冷やしてくれるのはありがたいこと。でも、私たち40〜50代には、ひとつ気をつけたいことがあります。
それは、冷やしすぎです。
ただでさえ冷房で体が冷えがちな夏。そこに冷たいサラダや冷やしたトマト、キンキンのスイカばかりが重なると、体が冷えすぎて、だるさや胃腸の不調につながることもあります(冷房と体調の話は、こちらの記事でも書いています)。
おすすめの工夫は、この3つです。
- 加熱して食べる:ゴーヤはチャンプルーに、トマトはスープや炒め物に。加熱すれば冷やす作用がやわらぎます
- 薬味をプラス:生姜・ねぎ・みょうがなど、体を温める薬味と組み合わせる
- 温かい汁物とセットに:冷たいおかずには、温かい味噌汁を一杯添える
「冷やす野菜」と「温める食べ方」をうまく組み合わせて、いいとこ取りをしましょう。

⚠️ カリウムについての大切な注意 腎機能が低下している方は、カリウムの摂取制限が必要な場合があります。健診で腎機能を指摘されている方や治療中の方は、自己判断せず、かかりつけの医師や管理栄養士にご相談ください。
まとめ:黄色い花の謎から、夏の食べ方まで
畑のふとした気づきから、ずいぶん長い旅になりました。まとめます。
- 夏の畑に黄色い花が多いのは、ミツバチに見つけてもらうため(受粉のため)
- でも「夏野菜が体を冷やす」のは本当。正体は豊富な水分(気化熱)とカリウム(ナトリウム排出)
- 東洋医学の経験知と現代栄養学が一致しているのが面白いところ
- ただしカボチャは例外。水分少なめ・デンプン質で「温める側」の野菜
- 冷房の季節は冷やしすぎに注意。加熱・薬味・温かい汁物と組み合わせて
畑の黄色い花は、「夏が来たよ、体を冷やす準備はできてるよ」という、自然からのサインなのかもしれません。次に夏野菜を手に取るとき、この話を思い出してもらえたら嬉しいです。
出典・参考
- 文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」
- 厚生労働省「日本人の食事摂取基準」
記事内の栄養情報は一般的な情報提供を目的としており、個人の体質や健康状態によって適した食事は異なります。腎機能に不安のある方、治療中の方は、医師や管理栄養士にご相談ください。
(出典:日本食品標準成分表2020年版〔八訂〕)
執筆者:pon
管理栄養士。医療機関での勤務経験を活かし、減塩・食品表示など「体にやさしい食」をテーマに発信しています。ヨガ講師資格(RYT200)も持ち、食と心身のケアの両面から情報をお届けします。


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