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ラーメンで「味薄め」が選べる時代|管理栄養士が驚いたタッチパネルと、後半に味が濃くなる理由

減塩・血圧ケア

家族でお出かけした日のこと。夜は「サッとラーメンにしようか」ということになり、目に留まったお店に入りました。よく見かけるチェーン店です。

席に着いて、私は少しだけ身構えていました。というのも——私がラーメン屋さんに入るのは、半年ぶり。いや、もしかしたら1年ぶりくらいだったからです。

なぜそんなに間が空いていたのか。今日はそこから正直にお話しさせてください。そして、そのお店で見つけたタッチパネルに、私は思わず感動してしまったのです。


正直に言うと、私はラーメン屋さんに行けなくなっていました

我が家の食事は、普段からかなり薄味です。管理栄養士という仕事柄もありますが、それ以上に「そのほうがおいしいと感じるから」という理由が大きいかもしれません。

その状態でラーメン屋さんに行くと、どうなるか。

一口目は、たしかにおいしいんです。

でも、二口、三口と食べ進めるうちに、その「おいしい」が、だんだん「濃い」に変わっていきます。そしてどこかで、おいしさより、濃さのほうが上回ってしまう。そうなると正直なところ、少し苦痛に近いものさえ感じてしまうのです。

それでも、お腹は空いています。だから、食べます。

でも、食べ終わるころには喉がカラカラ。そしてその渇きは、お店を出たあとも、しばらく続くのです。

そんなことが何度か重なって、いつのまにか足が遠のいていました。「ラーメンが嫌い」なのでは、まったくないんです。ただ、食べたあとの自分の体を思うと、少し腰が引けてしまう。そんな距離感でした。

正直な気持ちを書きます。当時の私は、「あれが”普通においしいもの”として出されていることが、ちょっと不思議」だと感じていました。あの濃さを普通に食べられる人、普通に作れる人がいる。それってどういうことなんだろう、と。

……この気持ちについては、記事の後半でもう一度戻ってきます。実はこれ、誰かを責める話ではなかったと、あとで気づくことになるので。


席のタッチパネルに「薄め」があった

さて、そのお店です。

席に置かれたタッチパネルで注文する方式でした。画面をタップしていくと、次々に選択肢が出てきます。

  • 麺の硬さ
  • 麺の量
  • 味つけ(何味にするか)
  • 味の濃さ
  • 背脂の量
  • ネギの量
  • そのほかのトッピング

え、こんなに選べるの……? と驚きながら画面を進めていくと、「味の濃さ」のところに、こうありました。

薄め / 普通 / 濃いめ

「薄め」。

思わず声が出そうになりました。私はもちろん、迷わず「薄め」をタップ。

ラーメン屋さんで「薄めにしてください」と口で頼むのは、正直ちょっと勇気がいります。忙しそうな店員さんに、わがままを言っているような気持ちになる。それが、画面の上では、ただの3つの選択肢のひとつとして、当たり前の顔をして並んでいる。

これは、かなり大きなことだと思いました。


管理栄養士の目には、こう見えました

ここからは、少しだけ仕事の目線で。

タッチパネルに並んでいた選択肢を、栄養の言葉に置きかえてみると、こうなります。

お店の表示管理栄養士の翻訳
味の濃さ塩分の調整つまみ
背脂の量脂質・エネルギーの調整つまみ
麺の量エネルギー・糖質の調整つまみ
味つけ(何味か)種類によって塩分・脂質の傾向が変わる
ネギの量ここだけは「増やす」が正解
そのほかのトッピング(有料)多くはたんぱく質系。「味付き」のものは塩分も一緒に増える
麺の硬さ栄養は変わらないが、噛む回数=満足感に効く

つまりあのタッチパネルは、お店が「減塩・減脂のスイッチ」を、お客さんの手に渡してくれているということなんです。

多くの方は、これを「味の好み」として使っていると思います。もちろんそれでいいのですが、同じ操作が、そのまま体への負担の調整にもなっている。そう思うと、あの画面がまったく違って見えてきませんか。

ちなみにネギだけは、遠慮なく「多め」でいいと思っています。薬味が増えると、味の濃さに頼らなくても満足感が出やすいからです。

そのほかのトッピングは、有料での追加でした。私が入ったお店で並んでいたのは、味付けたまご・味付けのり・チャーシューといった顔ぶれです。

ここで、つい管理栄養士の顔が出てしまいました。並んでいるのは、たんぱく質が中心。野菜を足せる選択肢は、実はあまりなかったのです。

しかも「味付け」たまご、「味付け」のり——名前のとおり、どちらも味がついています。つまり足せば、そのぶん塩分も一緒に増えるということ。チャーシューを追加すれば、脂質も増えます。もちろん、食べたいときに足すのは大歓迎です。ただ「トッピングで栄養バランスを整えよう」と考えると、少し思惑がずれてくる。

だからこそ、追加料金なしで量を選べる「ネギ」が、実はかなり貴重なんですね。ラーメンで野菜をちょっと増やしたいとき、いちばん手軽な一手は、やっぱりここでした。


それでも謎だったこと:なぜ後半になると、味が濃く感じるの?

さて、「薄め」を選んだ私のラーメン。最初の一口は「ちょうどいい!」と感激しました。

ところが。

食べ進めた後半、やっぱり味が濃くなってきたのです。

これ、心当たりのある方も多いのではないでしょうか。「最初はおいしかったのに、最後のほうはしょっぱい」という、あの現象。気になったので調べてみました。理由はひとつではなく、いくつか重なっているようです。

① 温度が下がると、塩味を強く感じる(これが大きそう)

味の感じ方は、温度によって変わることが知られています。そして塩味は、温度が低いほど強く感じられる傾向があるといわれています。

ラーメンは、出てきたときは熱々。食べ進めるうちに、どんどんぬるくなっていきます。つまり——スープの塩分量は変わっていないのに、温度が下がったぶん、塩味を強く感じるようになる

同じ味なのに濃くなったように感じる。その正体は、どうやら温度だったようです。

② 麺がスープを吸い続けている

丼の中で、麺はスープを吸い続けます。後半に食べる麺ほど、より多くのスープをまとっている状態になります。

③ タレが丼の底に沈んでいることがある

ラーメンは、丼にタレを入れてからスープを注いで作られることが多いもの。混ざり方にムラがあると、下のほうが濃くなることがあるといわれています。

④ スープが煮詰まる

熱い丼から水分が蒸発すれば、そのぶんスープは濃くなります。

そしてもうひとつ。記事のはじめに書いた、私が長いあいだ感じてきた「一口目はおいしいのに、二口目、三口目から濃くなっていく」——あの感覚も、どうやら気のせいではなかったようです。

「自分の舌がおかしいのかな」と思っていたのですが、そうではなかったとわかって、なんだかホッとしました。


ラーメンの塩分は、ほとんどが「スープ」でした

ここで、私自身も改めて確認して驚いた数字を紹介させてください。

日本食品標準成分表で中華めんを見てみると、こうなっています。

  • 中華めん(生):食塩相当量 1.0g/100g
  • 中華めん(ゆで):食塩相当量 0.2g/100g

ゆでると、0.2g。ぐっと少ないんです。麺に練り込まれた塩分の多くは、ゆでる過程でお湯に溶け出していくためです。

ラーメン1杯の食塩相当量は、種類やお店によってかなり幅がありますが、一般に4.5〜8g程度といわれています。麺が0.2g/100gということは——

ラーメンの塩分の大半は、スープ(とタレ)から来ている。

そして思い出していただきたいのが、前回の記事でも書いた数字です。厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、食塩相当量の1日の目標量は成人女性で6.5g未満、成人男性で7.5g未満

つまりラーメン1杯で、1日分をほぼ使い切ってしまうこともあるということになります。

だからこそ、スープを残すというひと手間が効いてきます。スープを飲み干さずに残すことで、摂取する塩分をかなり抑えられるといわれています。全部残すのが難しくても、「半分残す」だけでずいぶん違ってきます。

私も、スープは残しました。おいしかったので、正直ちょっと後ろ髪を引かれましたが。


「濃い味に慣れる」は、誰にでも起きることでした

さて、記事の前半で書いた、あの気持ちに戻ります。

あれが”普通においしいもの”として出されていることが、ちょっと不思議

調べていくうちに、私はこの考えを少し改めました。

味覚は、慣れるものだからです。

濃い味の食事が続くと、舌はその濃さを「基準」として覚えていきます。すると、薄い味が物足りなく感じられるようになる。逆に、薄味の食事を続けていると、今度は薄い味のほうを「ちょうどいい」と感じるようになる。一説には、1週間から10日ほどで舌は薄味に慣れていくともいわれています。

これは、その人の意志が弱いとか、健康意識が低いとか、そういう話ではまったくありません。誰の舌にも起きる、ごく自然な現象です。

そして私自身も、はじめから薄味だったわけではないんです。何年もかけて薄味の食事を続けた結果、私の舌の「普通」のほうが移動していた。だからラーメンが濃く感じた。ただそれだけのことでした。

つまり私が感じていた違和感は、「あの人たちがおかしい」ではなく、「私と、あなたの”普通”の位置が違うだけ」だったんですね。

そう考えると、ずいぶん気持ちが楽になりました。そして同時に、味覚は移動できるということでもあります。今「濃いめが好き」という方も、少しずつ薄くしていけば、数週間後には薄味をおいしいと感じているかもしれません。

――そしてもうひとつ。あのタッチパネルに「薄め」という選択肢が並んでいたこと。あれはきっと、お店の側も少しずつ変わってきているというサインなのだと思います。私が抱いていた小さな疑問に、お店のほうが先に答えを出してくれていた。そんな気がしました。


食べたあと、体はどうだったか

いちばん気になるところだと思うので、正直に書きます。

少し喉は渇きました。 でも、以前のような「カラカラになって、お店を出たあともずっと渇き続ける」という感じではありませんでした。「あ、これくらいなら大丈夫だ」と思える範囲だったんです。

「薄め」を選び、スープを残した。たったこれだけのことですが、体への負担は、ずいぶん軽くなっていたと思います。

そして何より——久しぶりに、家族と一緒にラーメンを楽しめた。これがいちばん嬉しかったことかもしれません。

「体に気をつけたいから」という理由で、家族との食事の選択肢が減っていくのは、やっぱりちょっと寂しいことです。カスタマイズできるお店が増えれば、私のような人間も、また食卓に戻ってこられる。そう思うと、あのタッチパネルは本当にありがたい存在でした。


まとめ:選べるようになったぶん、もっと自由に

今日のお話をまとめます。

  • ラーメン店のタッチパネルでは、麺の硬さ・麺の量・味つけ・味の濃さ・背脂・ネギ・トッピングまで選べることがある
  • あの選択肢は、栄養で見ると「塩分・脂質・エネルギーの調整つまみ」。お店が減塩のスイッチを客に渡してくれている
  • 後半に味が濃く感じるのは、主に温度が下がって塩味を強く感じるようになるため。麺がスープを吸う、タレが底に沈む、なども重なる
  • ラーメンの塩分はほとんどがスープ由来(ゆでた中華めんは0.2g/100g)。だからスープを残すのがいちばん効く
  • 「濃い味に慣れる」は誰にでも起きる自然なこと。そして味覚は、また移動させることもできる

我慢して食べないよりも、選び方を知って、おいしく食べる。そのほうがずっといいと、私は思っています。

もし次にラーメン屋さんでタッチパネルを見かけたら、ぜひ「味の濃さ」の項目を探してみてください。「薄め」を選ぶのは、わがままでも何でもありません。ちゃんと用意されている、あなたのための選択肢です。

完璧じゃなくていいんです。ゆるく、無理なく、おいしく。


出典・参考

  • 文部科学省「食品成分データベース」(日本食品標準成分表〈八訂〉増補2023年)中華めん 生/ゆで
    https://fooddb.mext.go.jp/
  • 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/eiyou/syokuji_kijyun.html
    (食塩相当量の目標量:成人男性7.5g未満/成人女性6.5g未満)

※タッチパネルの選択項目や表示は、店舗・チェーンによって異なります。情報は2026年8月時点のものです。

記事内の情報は個人の体験と一般的な情報をもとにしたものです。塩分の制限が必要な方、高血圧や腎臓の疾患で治療中の方は、医師や管理栄養士の指示に従ってください。



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