健康診断の結果は、どこにも赤い文字がない。
糖尿病を指摘されたこともない。体重も大きくは変わっていない。食事にも、それなりに気をつけている。
それなのに——**「あなたの体、焦げています」**と言われたら、どう思いますか。
正直に言うと、私がそうでした。
きっかけは、お店にあった測定器でした
職場の近くに、AGE(エージーイー)の測定器が置いてあるお店があるんです。ランチによく行くお店なので、食事のついでに時々測らせてもらっていました。
指先に光を当てるだけ。 痛くもないし、数分で終わります。

ところが——これまで10回近く測って、半分がD判定。 残りの半分がB判定かC判定。
管理栄養士として、食事のバランスには気をつけているつもりです。血液検査のHbA1cも5.6%。糖尿病を指摘されたことは、一度もありません。
それなのに、この結果。
……と思っていたら、その5.6%も微妙でした
正直に白状します。この記事を書くために調べ直して、ちょっと気まずくなりました。
厚生労働省の「標準的な健診・保健指導プログラム」では、**HbA1cは5.6%以上が「保健指導判定値」**とされています(医療機関への受診をすすめる「受診勧奨判定値」は6.5%以上)。
つまり5.6%は——
- 病院にかかるレベルでは、まったくない
- でも「生活習慣を見直しましょう」と声をかけられる、ちょうどその線の上
「異常なし」ではなかったんです。 管理栄養士なのに、自分の健診結果を「赤い字がないからセーフ」で済ませていました。
ご自身の健診結果、よかったら見てみてください。5.6以上6.5未満なら、私と同じ場所にいます。
「じゃあ、この食生活の、何を直したらいいの?」
その疑問が、だんだん大きくなっていきました。そのうち、のど飴をひとつ食べるのにも、ごはんをよそうときにも、「これ、食べ過ぎなんじゃないかな」と頭のどこかが反応するようになって。
……正直、心地よくなかったんです。
だから、きちんと調べました。そうしたら、私が気にしていた場所は、そもそも的外れだったということが分かってきました。

この記事で分かること
- **AGE(体の焦げ)**とは何か。どこから体に入ってくるのか
- 健診で何も言われていないのにAGEが高いのはなぜか。矛盾ではない理由
- **HbA1c 5.6%**は、実は「保健指導判定値」ちょうどだったという話
- AGEを増やしていたのは「糖質の量」ではなかった ← ここがいちばんの驚きでした
- 測るたびに結果が変わるのは、なぜなのか(正直に書きます)
- 今日からできることを、効果の大きい順に3つ
- どれくらいで変わるのか。2日・3か月・15年の時間軸
そもそもAGEって、何のこと?
AGEは、日本語だと「終末糖化産物(Advanced Glycation End Products)」といいます。
……漢字が強すぎますよね。ざっくり言うと、糖とタンパク質がくっついてできた、変質した物質のことです。
イメージしやすいのは、ホットケーキです。生地の砂糖と、卵や牛乳のタンパク質。これを熱すると、こんがりときつね色になっておいしそうな匂いがしますよね。あれがまさに糖化——AGEができる反応です。
やっかいなのは、一度できたAGEは、元には戻らないこと。焦げたホットケーキが生地に戻らないのと同じです。
だから「体の焦げ」と呼ばれています。

AGEの入り口は、2つあります
ここを分けて考えると、一気に分かりやすくなります。
| ①体の中で作られるAGE | ②食べ物から入ってくるAGE | |
|---|---|---|
| できかた | 血液中の糖が、体のタンパク質と結合する | 高温調理で、食品の中にすでにできている |
| 決まる要素 | 血糖の高さ × 続いた時間 | 調理の温度と方法 |
| 関係する習慣 | 血糖の急上昇をくり返す食べ方 | 焼く・揚げる・グリルの頻度、外食や加工食品 |
①だけを気にしている人が、とても多いと思います。私もそうでした。「糖質を摂りすぎたかな」と反応していたのは、①の話です。
でも実際には、②の入り口も開きっぱなしだったんですね。
そしてどちらのAGEも、体にたまるとタンパク質——とくにコラーゲンと結合します。肌の弾力が落ちたり、血管がかたくなったり、炎症の原因になったりする、といわれています。

血液検査は正常なのに、なぜAGEは高いの?
ここが、いちばん引っかかるところだと思います。私も「検査は問題ないのに、なんで?」と思いました。
答えは、見ている時間の長さが違うからです。
| 検査 | 見ているもの | 時間の幅 |
|---|---|---|
| HbA1c(血液検査) | 平均的な血糖の高さ | 過去1〜2か月 |
| AGE測定(指先の光) | 体にたまった糖化のあと | 過去数年ぶん |
つまり、こういうことです。
- HbA1c 5.6% = 「この1〜2か月の血糖は、病院にかかるほどではありませんでしたよ」
- AGE D判定 = 「この数年のあいだにたまったものが、わりと多いですよ」
矛盾していません。 「直近のテストの点はよかったけれど、これまでの通知表の平均は別」という話に近いと思います。
だから、健康診断で何も言われていない人でも、AGEが高く出ることはあります。むしろ、よくあることのようです。
しかも、AGEは血糖だけでは決まらない
これも意外でした。AGEが増える要因は、血糖以外にもあります。
- 調理の温度と方法(焼く・揚げる頻度)
- 外食や加工食品(すでにAGEが含まれている)
- 喫煙
- 酸化ストレス、慢性の炎症
血糖はそのうちのひとつ、ということなんですね。
血液検査が正常でも安心しきれない、という話はHDLコレステロールの記事でも書きました。「数値が基準内=何もしなくていい」とは限らない、というのは、どの項目にも共通している気がします。
ところが——増やしていたのは「糖質の量」ではなく「焼き色」だった
さて、ここからが本題です。
私は「食べ過ぎかな」「糖質が多いかな」とばかり気にしていました。でも調べていくうちに、自分が完全に見落としていた入り口が見えてきたんです。
それが、さっきの表の②——調理方法でした。
同じ食材でも、調理法でAGE量はまるで違う
食品に含まれるAGEを調べた研究によると、揚げた食品は、煮たり蒸したりした食品より、はるかに多くのAGEを含んでいると報告されています(Uribarri ら、2010年)。
食材が同じでも、です。
- 焼く・揚げる・グリル・ロースト → 高温・乾いた熱。AGEが多くできる
- 煮る・蒸す・ゆでる・湯せん → 100℃どまり・水がある。AGEができにくい
こんがりした焼き色や、揚げ物の香ばしさ。あれはおいしさの合図であると同時に、AGEができた合図でもあるわけです。
……料理をする人間としては、なかなかショックな事実でした。
自分の食卓を、正直に振り返ってみました
そこで、ここ最近の自分の調理方法を書き出してみたんです。
- 毎日、「焼き」調理(しかも、こんがり焼き色をつけるのが好き)
- 週2回くらい、揚げ物
- 週2回、外食か、お惣菜
……並べてみて、言葉が出ませんでした。
糖質の量ばかり見ていたけれど、AGEの入り口のほうは、毎日フルオープンだったんです。管理栄養士なのに、です。
あなたの食卓は、どうでしょう
よかったら、同じように数えてみてください。この1週間で、何回ありましたか。
- こんがり焼き色をつけた料理(焼き魚、焼き肉、トースト、焼きおにぎり)
- 揚げ物(自宅・お惣菜・外食を合わせて)
- グリル、ロースト、オーブン料理
- 外食、テイクアウト、お惣菜
- スナック菓子、クッキー、焼き菓子
煮る・蒸す・ゆでるの回数より、上の合計のほうが多かった人。 私と同じ状態かもしれません。
そしてここが大事なところなんですが——これ、糖質を減らしても解決しない入り口です。 だから「食べ過ぎかな」と気にしていても、いつまでも手ごたえがなかったんですね。

測るたびに結果が違うのは、なぜ?
これまでお店に行く度に測っていて、計10回の測定のうちD判定が半分。B・C判定が半分。**そもそもこのばらつきは何なの?**というのも、気になっていました。
これについては、正直に書きます。はっきりした答えは見つかりませんでした。
考えられることは、いくつかあります。
- 測定そのもののばらつき(測る指、時間帯、手の状態などで変わる可能性)
- 直近の生活の影響(前日に揚げ物だった、寝不足だった、など)
- たまたま
ネット上には「短期の生活習慣が反映されているのだ」と言い切っている説明もあります。でも、それを裏づける公的な資料は見つけられませんでした。
なので私は、こう考えることにしました。
1回の判定に一喜一憂しない。 見るなら、何回か測った全体の傾向を見る。
店頭の測定器は、病院の検査とは違います。「気づくきっかけ」としてはとても優秀ですが、診断ではありません。 数字に振り回されそうになったら、ここを思い出そうと思っています。
今日からできること。効果の大きい順に3つ
調べたことを、やることに落とし込みます。上から順に、効果が大きいものです。
① 調理法を1日1回、「焼く」から「煮る・蒸す」に替える ← いちばん効きます
理由: AGEの入り口②を、直接しぼれるからです。しかも今日からできます。
高温を避ける調理法(ゆでる、蒸す、煮込む、湯せん)は、揚げる・焼く・グリル・ローストに比べて、食品中のAGEを有意に減らすと報告されています。
置きかえの例です。
| いつもの | 替えると |
|---|---|
| 皮をパリッと焼いた焼き魚 | 蒸し魚、煮魚、ホイル蒸し |
| から揚げ | 鶏の煮込み、蒸し鶏 |
| 焼いたステーキ | しゃぶしゃぶ、ポトフ、スープ煮 |
| トースト(こんがり) | 焼き色を浅めに、または蒸しパン |
ぜんぶ替えなくていいです。 私も、こんがりした焼き魚が好きなので、やめるつもりはありません。
ただ、1日3食のうち1食を替えるだけでも、1週間で7回ぶん違ってきます。 そのくらいで十分だと思っています。
ちなみに、揚げ物そのものを悪者にしたいわけではありません。揚げ物との付き合い方は、以前こちらの記事でも書きました。頻度の問題です。
② 朝食を抜かない。時間を大きくずらさない
理由: こちらは入り口①、体の中で作られるAGEのほうを減らす話です。
2型糖尿病の方22人を対象にした研究で、朝食を抜いて昼まで絶食すると、その日の昼食後と夕食後の血糖が高くなったと報告されています(Diabetes Care、2015年)。朝を抜いたぶんが、あとの食事に響くわけですね。
血糖が高い時間が長いほどAGEはできやすいので、朝食を抜くのは、①の入り口を広げる方向だといえます。
ここで正直に申し上げると——私の場合は、平日6時30分、休日9時。この2時間半のずれが気になっていました。ただ、この研究は「昼まで抜いた場合」の話であって、2〜3時間のずれについて同じことが言えるかどうかは、確かめられませんでした。
なので、こう考えています。
- 抜かない。これは根拠がはっきりしている
- ずらしすぎない。こちらは念のため。差は1時間くらいまでにしておくのが理想と心得る
ちなみに、血糖の上がり方をゆるやかにする食べ方については、ベジファーストの記事に書いています。
③ 外食では、メニュー名で選ぶ
理由: 外食や加工食品は、作られた時点ですでにAGEが入っています。 家でどれだけ工夫しても、週2回ここが開いていると、なかなか閉じません。
うれしいのは、特別な知識が要らないことです。メニュー名に調理法が書いてあるので、そこを見るだけ。
| 選びにくいもの | 選びやすいもの |
|---|---|
| 唐揚げ定食、とんかつ | お刺身、煮魚定食、蒸し鶏 |
| 焼き肉 | しゃぶしゃぶ、すき焼き、鍋 |
| 天ぷら | 茶碗蒸し、煮物、おひたし |
| こんがりグラタン | スープ、ポトフ |
「揚」「焼」「グリル」より、「煮」「蒸」「鍋」「刺」。それだけです。

どのくらいで変わるの?——2日・3か月・15年の話
ここを知っておくと、焦らなくてすみます。 むしろ、この記事でいちばんお伝えしたいところかもしれません。
2日後:食べ物から入ったAGEは、出ていき始める
食べ物から摂ったAGEのうち、体に吸収されるのは約10%。そして吸収されたぶんのうち、約3分の1は48時間以内に尿から出ていくと報告されています(腎臓の働きが正常な場合)。
つまり——今日、煮ものに替えたら、あさってにはもう違いが出ている。 ここは、案外はやいんです。
数週間〜3か月:血液の中のAGEが下がってくる
体の中で作られるAGEのほうも、血糖の急な上下が減れば、少しずつ落ち着いてくると考えられます。
15年:皮膚にたまったAGEは、ここまでゆっくりしか減らない
そして、ここが問題です。数字を見て、私は言葉を失いました。
一度コラーゲンにくっついたAGEは、尿で流し出すことができません。減るのは、古いコラーゲンが新しいものに入れ替わるときだけです。
では、皮膚のコラーゲンはどれくらいで入れ替わるのか。
半分が入れ替わるのに、約15年。
コラーゲンの入れ替わりとAGEの蓄積を調べた研究で、アスパラギン酸の変化から推定された年数です(Verzijl ら、2000年)。ちなみに同じ研究で、ひざなどの関節軟骨のコラーゲンは約117年と計算されています。
……15年。半分で、15年です。
だから、目標は「ゼロにする」ではありません
でも、この数字を知って、私はむしろ楽になりました。
だって、もう決着がついているんです。
すでにたまったAGEを全部なくす——15年かけて半分なら、無理です。追いかけるだけ疲れます。
これ以上、増やさない——これなら、今夜のおかずからできます。
のど飴ひとつに反応していたのは、前者を目指していたからなんですよね。「今日の一口で、たまったぶんが増えてしまう」と思うから、こわい。
でも本当は、今日の一口は、これから先の15年ぶんの話なんです。だったら、1回の失敗を悔やむより、全体の頻度を少し変えるほうがずっと効く。
目標を後者に置きかえたら、肩の力が抜けました。
まとめ:「何を食べるか」より「どう食べるか」
今日のお話をまとめます。
- **AGE(体の焦げ)**は、糖とタンパク質が結びついてできる物質。一度できると元に戻らない
- 入り口は2つ。①体の中で血糖から作られるぶん ②高温調理の食べ物から入ってくるぶん
- 血液検査は過去1〜2か月、AGE測定は過去数年を見ている。検査が正常でもAGEが高いのは、矛盾ではない
- ちなみにHbA1cは5.6%以上が「保健指導判定値」。赤い字がなくても「異常なし」とは限らない
- 見落としがちなのは②の入り口。同じ食材でも、揚げる・焼くと、煮る・蒸すではAGE量が大きく違う
- 食べ物から摂ったAGEのうち吸収されるのは約10%。そのうち約3分の1は48時間以内に尿から出ていく
- 対策の順番は、①調理法(1日1食を煮る・蒸すに)→ ②朝食を抜かない → ③外食はメニュー名で選ぶ
- 皮膚のコラーゲンは、半分が入れ替わるのに約15年(推定)。だから目標は「ゼロにする」ではなく「これ以上増やさない」
- 店頭の測定は診断ではなく、気づくきっかけ。1回の判定に一喜一憂しない
「糖質、摂りすぎたかな」と、食べるたびに小さく反応してしまう。もし今そうなっている方がいたら、見る場所を、量から調理法に移してみませんか。
こんがり焼いたものを、ぜんぶやめる必要はありません。私もやめません。今夜のおかずを1品、フライパンから鍋に移す。それだけで、ちゃんと前に進んでいます。
「食べ過ぎかも」ではなく、「これでいい。工夫できるところは、まだある」。そんなふうに思えたら、毎日の食卓はずいぶん軽くなるはずです。

出典・参考
- Uribarri J, et al. “Advanced glycation end products in foods and a practical guide to their reduction in the diet.” Journal of the American Dietetic Association. 2010;110(6):911-916.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20497781/ - Jakubowicz D, et al. “Fasting Until Noon Triggers Increased Postprandial Hyperglycemia and Impaired Insulin Response After Lunch and Dinner in Individuals With Type 2 Diabetes: A Randomized Clinical Trial.” Diabetes Care. 2015;38(10):1820-1826.
https://diabetesjournals.org/care/article/38/10/1820/37683/ - 島津製作所「AGEsセンサ」(指先の経皮蛍光によるAGEs測定)
https://www.an.shimadzu.co.jp/products/life-science-lab-instruments/health-support-platform/ages-sensor/index.html - AGE測定推進協会「AGE(終末糖化産物)を測るには」
https://www.age-sokutei.jp/measure/ - Verzijl N, et al. “Effect of collagen turnover on the accumulation of advanced glycation end products.” Journal of Biological Chemistry. 2000;275(50):39027-39031.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10976109/ - 厚生労働省「標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年度版)」別紙5「健診検査項目の保健指導判定値及び受診勧奨判定値」P.125
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001231390.pdf
※情報は2026年9月時点のものです。
記事内の情報は、個人の体験と一般的な情報をもとにしたものです。店頭のAGE測定は診断を目的としたものではありません。糖尿病や腎臓の病気で治療中の方、健康診断で数値を指摘されている方は、自己判断せず、医師や管理栄養士の指示に従ってください。
【この記事を書いた人】
pon|管理栄養士・RYT200保有。医療施設での勤務経験を持つ40代主婦。
実体験をもとに、無理なく続けられる食と暮らしのヒントを発信しています。

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