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「うすくち」なのに塩分は濃い?うすくち醤油パラドックス|管理栄養士が研究を読み比べたら、減塩のカギは「砂糖」でした

減塩・血圧ケア

うすくち醤油、使っていますか?

「うすくち」と聞くと、味がうすい、塩分もうすい、と思いますよね。でも実は、うすくち醤油は、こいくちよりも塩分が多いんです。名前と中身が、まるであべこべ。

 食塩相当量(100gあたり) 
 こいくちしょうゆ      14.5g
 うすくちしょうゆ      16.0g

しかも研究者のあいだでは、もうひとつのあべこべが知られています。塩分が多いはずのうすくちで作ると、料理の塩分は少なくてすむ——「うすくち醤油パラドックス」です。( パラドックスとは、「一見すると矛盾しているけれど、実は筋が通っていること」。 )

私も、ずっと「うすくちは、うまく使えば減塩につながる調味料」だと思ってきました。

本当にそうなのか。気になって研究を探してみたら、「うすくちで作ったら、塩分が少なくてすんだ」という研究と、「そうはならなかった」という研究の、両方が見つかりました。そして、2つを読み比べてわかった減塩のカギは、意外にも「砂糖」でした。

この記事でわかること

  • うすくち醤油は、どんなしょうゆなのか
  • うすくちで作ったら、塩分が少なくてすんだ研究と、そうはならなかった研究
  • 結果が分かれた理由。カギは「砂糖」だった
  • 甘くすると、なぜ塩も増えてしまうのか
  • うすくちを上手に使う、4つのコツ

うすくち醤油って、どんなしょうゆ?

日本醤油協会によると、うすくち醤油は、色や香りを抑えて、素材の持ち味を生かすためのしょうゆです。発酵や熟成をゆるやかにして色を薄く仕上げるために、食塩をこいくちより1割ほど多く使っています。だから、塩分が多いんですね。

素材の色をきれいに仕上げたい、炊き合わせや含め煮などに使われます。

私も、煮物や和え物で、見た目を茶色くしたくないときに、うすくちを使っています。関西の料理は、だしの文化だなと感じます。京都の料理のように、色が薄くて、食材の色を生かしたお料理も多いですよね。

ただ、正直に言うと、うすくちはこいくちと同じ感覚で入れると、ちょうどいい味にするのがむずかしいんです。「どうすれば上手に使えるんだろう」は、私自身がずっと知りたかったことでもあります。

なお、うすくちは「塩分が少ない」と勘違いされやすい調味料です。日本醤油協会も、その点を注意しています。


うすくちで作ったら、塩分が少なくてすんだ研究

まずは、「うすくちで作ったら、塩分が少なくてすんだ」という研究から見ていきましょう。

日本調理科学会の近畿支部の研究グループが、同じ材料の煮物を、うすくちとこいくちで作りくらべました。煮汁の塩分を4段階に変えて、どれがいちばんおいしいかを評価してもらったところ——

    いちばんおいしいと評価された煮汁の塩分  
  うすくち            3.0%
  こいくち            4.0%

うすくちのほうが、少ない塩分で「おいしい」と感じられたんです。できあがった煮物の塩分も、かぼちゃの煮物はうすくち0.3%・こいくち0.4%、かれいの煮つけはうすくち1.2%・こいくち1.9%と、うすくちのほうが低くなりました。

しょうゆそのものは塩分が多いのに、料理になると塩分が少なくてすむ。冒頭でお話しした「うすくち醤油パラドックス」は、この研究から生まれた言葉です。

理由としては、うすくちは塩味を感じとりやすいこと、そしてだしの風味を引き立てることが挙げられています。うすくちとかつおだしをいっしょに使うと、塩味が強く感じられる、という研究もあります。

※この研究の一部は、うすくち醤油のメーカーとの共同研究です。


そうはならなかった研究

ところが、2021年に、まったく逆の結果が出ました。

大学の研究グループが、大阪と東京の家庭に、ふだんどおりに煮物を作ってもらいました。大阪はうすくち、東京はこいくちを使って、肉じゃが・かぼちゃの煮物・大根の煮物・ひじきの煮物の4種類です。

結果は、4種類すべてで、うすくちを使った大阪の煮物のほうが、塩分が高かったんです。

原因として浮かび上がったのが、砂糖でした。

砂糖を減らしたら、塩も減った

この研究では、もうひとつ面白い実験をしています。

まず、ふだんどおりに肉じゃがを作ってもらい、使った砂糖とみりんの量を量っておきました。

そして別の日に、もう一度、肉じゃがを作ってもらいます。このとき研究者は、1回目の8割の量の砂糖とみりんを、あらかじめ量って用意し、「これを使ってください」と渡しました。減らしてあることは、本人には伝えていません。

しょうゆなど、ほかの調味料は、いつもどおり自由に入れてもらいました。すると——

作った人は何も知らないのに、塩分も約16%減っていたんです(はっきりした差とまでは言えないものの、全員の平均で)。

研究者は、「糖分に合わせて、塩分のバランスをとっている」と考えています。甘さが多いと、それに合わせて、無意識に塩やしょうゆを足してしまうんですね。

私は以前、職場で調理も担当していた管理栄養士さんから、「砂糖が多いほど、バランスをとるために塩分も多くなる」と聞いたことがありました。でも、実験で確かめられていたとは知りませんでした。


甘くすると、なぜ塩も増えてしまうの?

その仕組みは、1980年の研究でわかっていました。

塩味は、砂糖の量が増えるほど、弱く感じられるんです。甘さで塩味がぼやけるので、「味が足りない」と感じて、しょうゆを足してしまう。研究者は、「減塩の煮物では、砂糖は少ないほうがよい」とまとめています。

2025年には、京都府立医科大学などの研究で、濃い塩味に甘味を加えると、「しょっぱい」と感じて嫌がる反応が減ることも確かめられました。甘さが加わると、塩分のとりすぎに気づきにくい、ということです。

ちなみに、その管理栄養士さんからは、「カレーも、甘くすると塩が多くなる」とも聞いていました。気になって、市販のカレールウ4つのブランドで、甘口・中辛・辛口の栄養成分表示を見くらべてみました。すると、どのブランドも、甘口・中辛・辛口で1皿分の塩分はほとんど同じ(差は0.1gまで)。甘口のほうが炭水化物が多い、ということもありませんでした。

つまり、少なくともルウの段階では、「甘口ほど塩が多い」ということはありません。塩が増えるかどうかは、家で甘さを足したときに、しょうゆやソースを足すかどうかは——作る人しだい、なのかもしれません。

「砂糖が先」は、昔からの知恵

煮物の味つけは、「さしすせそ」——砂糖、塩、酢、しょうゆ、みその順に入れる、とよく言われます。砂糖は、塩より分子が大きく、素材にしみ込むのに時間がかかるので先に入れる、と説明されることが多いです。私も、煮物は砂糖から入れています。

この順番は、昔から言われている調理の知恵です。ただ、2021年の研究では、80食のうち、砂糖より先に塩やしょうゆを入れた人は、わずか7食。ほとんどの人が砂糖を先に入れていました。

最初に入れる砂糖の量が、そのあとの塩の量を決めているのかもしれません。研究者も、「先に入れる砂糖の量を減らすことが、減塩の一つの方法になるのでは」と書いています。


なぜ、研究の結果が分かれたの?

2つの研究は、くらべているものが違いました。

「塩分が少なくてすんだ」研究「そうはならなかった」研究 
 作り方 条件をそろえた実験 家庭で、ふだんどおり
 調べたこと     おいしいと感じる塩分 実際に入れた塩分
 砂糖や水の量 そろえてある 人それぞれ

うすくちには、少ない塩分でもおいしく感じられる力がある。でも、ふだんの料理では、砂糖を多めに入れたり、煮汁を多めにしたりして、その力を生かしきれていないことがある——ということなんだと思います。

おいしさは、舌だけで決まらない

私は、おいしさは舌だけで決まるものではないと思っています。

味の濃さだけでなく、見た目、盛りつけ、素材の良さ、食べる人のその日の体調。それに、食べるときの状態——急いでいるのか、考えごとをしているのか、食事に集中できているのか。いろいろなことが合わさって、「おいしい」になります。

うすくちは、見た目や素材の持ち味を生かすことで、このおいしさを支えてくれる調味料です。だからこそ、塩分が少なくても満足できる。ただし、それを生かせるかどうかは、使い方しだいなんですね。


うすくちを上手に使う、4つのコツ

調べた研究から、うすくちを上手に使うコツをまとめました。私も、今日からやってみようと思います。

① こいくちと同じ量を入れない

研究では、うすくちのほうが少ない塩分でおいしく感じられました。こいくちのつもりで同じ量を入れると、塩分が多くなります。少なめに入れて、味見をしながら足すのがおすすめです。うすくちは塩味を感じとりやすいので、味見でちょうどいいところを見つけやすいはずです。

② だしをしっかりきかせる

うすくちとかつおだしをいっしょに使うと、塩味が強く感じられます。だしがきいていれば、しょうゆは少なめで足ります。

③ 砂糖・みりんを控えめに

砂糖を2割減らしたら、塩も約16%減りました。甘さを控えると、塩味をはっきり感じられるので、しょうゆを足しすぎずにすみます。

④ 煮汁を入れすぎない

2025年に日本調理科学会の学会賞を受けた研究で、人は、材料の量ではなく「煮汁の量」に合わせて味つけしていることがわかりました。煮汁を味見して、ちょうどいい味になるまで、しょうゆを入れますよね。だから、煮汁が多いほど、しょうゆもたくさん必要になるんです。

家庭では、料理の本より煮汁を多めに入れがちだったそうです。料理の本どおりの少なめの煮汁で作ってもらったら、しょうゆが少しで足りて、煮物の塩分が下がりました。


まとめ

  • うすくち醤油は、こいくちより塩分が多い(100gあたり16.0g、こいくちは14.5g)
  • 条件をそろえた実験では、うすくちのほうが少ない塩分でおいしいと感じられた
  • でも、家庭の調査では、うすくちの煮物のほうが塩分が高かった。原因は砂糖
  • 砂糖を2割減らしたら、塩も約16%減った。甘さが多いと、塩味が弱く感じられるから
  • うすくちを上手に使うコツは、少なめから・だしをきかせる・砂糖控えめ・煮汁は少なめ

うすくちは、「減塩のしょうゆ」ではありません。でも、素材やだしの味を生かして、少ない塩分でおいしく仕上げる力を持った調味料です。

その力を生かせるかどうかは、使い方しだい。私も、まずは砂糖を少し控えるところから、試してみようと思います。


出典・参考

  • 日本醤油協会「しょうゆの種類」
    https://www.soysauce.or.jp/knowledge/kinds
  • 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」食品成分データベース(こいくちしょうゆ、うすくちしょうゆの食塩相当量)
    https://fooddb.mext.go.jp/
  • 小早川知子「淡口醤油の塩味とだし風味の閾値およびかつおだしとの併用による塩味の増強」日本醸造協会誌 106巻2号 81-89(2011)(日本調理科学会近畿支部の研究グループによる煮物の比較を紹介)
    https://www.jstage.jst.go.jp/article/jbrewsocjapan/106/2/106_81/_pdf/-char/ja
  • 有泉みずほ・澤田崇子・瀬戸美江「大阪と東京の大学生家庭の煮物調理における淡口・濃口醤油の使用実態と糖分量が塩分量に及ぼす影響」日本食育学会誌 15巻3号 119-126(2021)
    https://www.jstage.jst.go.jp/article/shokuiku/15/3/15_119/_article/-char/ja/
  • 澤田崇子「煮物調理における調味および操作に関する調理科学的研究」日本調理科学会誌 58巻2号 61-68(2025)
    https://www.jstage.jst.go.jp/article/cookeryscience/58/2/58_61/_article/-char/ja
  • 口羽章子・玉川和子・松下ツイ子「減塩食調理の食味について(第3報)」栄養学雑誌 38巻2号 129-139(1980)
    https://doi.org/10.5264/eiyogakuzashi.38.129
  • 京都府立医科大学・ハウス食品グループ本社ほか「The addition of sweetness reduces aversion to high salt concentrations in patients with chronic kidney disease」Scientific Reports(2025)
    https://www.nature.com/articles/s41598-025-09602-x

※情報は2026年10月時点のものです。

記事内の情報は一般的な情報提供を目的としたものです。高血圧や腎臓病などで、医師から塩分の制限を指示されている方は、その指示にしたがってください。


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