
先日、定期的に通っているヨガのレッスンで、先生がこんな話をしていました。
「この時期は、体に水が溜まりやすいんですよ。だから、なんとなく不調を感じる人が多いかもしれません。こまめに体を動かして、巡りをよくしていきましょうね」
——確かに。言われてみれば、梅雨のじめじめした時期は、なんだか体が重だるい気がします。
でも、そこでふと疑問がわきました。そもそも、体に入る水分(イン)と出ていく水分(アウト)って、どれくらいなんだろう? 「体に水が溜まる」って、いったいどういうことなんだろう?
今回は、管理栄養士の視点で、この「夏の水分補給」について深掘りしてみました。
みんな、普段は何を飲んでいますか?
水、麦茶、緑茶、コーヒー、スポーツドリンク、ジュース……。
ひとくちに「水分補給」といっても、選ぶ飲み物は人それぞれですよね。
でも実は、「ただ飲めばいい」というわけではないんです。何を・いつ・どれくらい飲むかで、体への届き方は変わってきます。まずは、私たちの体の「水の出入り」から見ていきましょう。
私たちの体の水分「イン」と「アウト」
私たちの体は、成人で約60%が水分でできています。そして毎日、入る水分と出る水分が、だいたい同じ量でバランスをとっています。
その量、なんと1日およそ2.5L。内訳はこんなふうになっています(厚生労働省「健康のため水を飲もう」推進運動より)。

ポイントは、食事からも約1L、体の中でも約300mlの水分がつくられているということ。つまり「飲み物」で補いたいのは、だいたい1.2Lくらいが目安になります。
そして注目したいのが「アウト」。意識していなくても、呼吸や皮膚から約900mlもの水分が、自然と出ていっています(これを「不感蒸泄(ふかんじょうせつ)」といいます)。夏はここに汗が加わるので、出ていく量がぐっと増えるんですね。
「体に水が溜まる」ってどういうこと?
では、ヨガの先生が言っていた「体に水が溜まる」とは、どういう状態なのでしょう。梅雨〜夏に多いといわれる理由を調べてみると、3つの原因が重なっているようでした。

① 湿度が高くて、汗が蒸発しにくい
梅雨は、空気がすでに水分でいっぱい。すると皮膚から汗が蒸発しにくくなり、体の水分がうまく外へ出ていきません。やがて汗自体もかきにくくなって、水分が体に滞り、むくみやだるさにつながるといわれています。
② 冷たいもの・冷房で「内臓が冷える」
冷たい飲み物やエアコンで体が冷えると、水分代謝が落ちて、体が”溜め込みモード”に入ってしまうといわれます。
③ 低気圧で「自律神経」が乱れる
梅雨は気圧の変化が激しく、自律神経が乱れやすい時期。血行が滞り、余分な水分や老廃物が回収されにくくなって、むくみへとつながります。
「摂りすぎ」より「出せていない」
ここでよくある誤解が、「自分が水を飲みすぎているのかな?」というもの。でも実は、原因は摂りすぎよりも、「出す力・巡りが落ちている」ことのほうが大きいんです。
だから、「水分を減らせばいい」わけではありません。水分はちゃんと必要。大切なのは「摂ったら、ちゃんと巡らせて出す」こと。
そして、余分な水分は体を動かすことで巡りが促され、排出されやすくなります。「こまめに動いて循環をよくしよう」というヨガの先生の言葉は、まさに理にかなっていたんですね。じめじめして重だるい日こそ、軽く体を動かす——私自身、その大切さをあらためて感じています。
じゃあ、何を・どれくらい飲めばいい?
水分補給の基本は、こんなイメージです。
- ふだん使い:水・麦茶でこまめに
- 大量に汗をかいたとき:経口補水液やスポーツドリンクで、水分と一緒に塩分も
- 飲み方のコツ:のどが渇く前に、こまめに少しずつ(一気飲みより、回数を分けて)。起床時・就寝前・運動の前後も忘れずに

気をつけたい飲み物気をつけたい飲み物
- カフェインの多いもの(コーヒー・緑茶など):利尿作用があるといわれますが、実はかなり穏やか。適量なら水分補給にもなります。ただ、汗をたくさんかく夏は、メインは水や麦茶にして、コーヒー・緑茶は「楽しみとして適量」にするのがおすすめです
- 甘い清涼飲料:飲みすぎは糖分のとりすぎに
- アルコール:こちらは利尿作用がはっきりしていて、水分補給にはなりません(むしろ出ていきます)
ちなみに「利尿作用のある飲み物で、むくみを出せばいいのでは?」と思うかもしれません。でも梅雨のむくみは“水が多すぎる”のではなく“巡りが滞っている”のが原因。利尿で出すより、動いて巡らせるほうが効果的です。
夏に「麦茶」が定番なのは、なぜ?

ところで、夏といえば麦茶。CMでも「ノンカフェイン」「ミネラル」と宣伝されていますよね。でも、なぜ緑茶ではなく麦茶なのでしょう。
いちばんの理由は、ノンカフェインで「利尿作用がない」こと。緑茶にはカフェインが含まれ、せっかくの水分が尿として出ていきやすいのですが、麦茶はカフェインゼロ。たくさん飲んでも水分を逃がさないので、夏の水分補給に向いているんです。お子さんや妊娠・授乳中の方も安心して飲めます。
ミネラルは「おまけ」くらいに
麦茶には、カリウム・カルシウム・マグネシウムなどのミネラルが含まれています。ただし正直にお伝えすると、その量はごく微量。たとえばカリウムは1杯(200ml)あたり約12mgほどです。
しかも意外なことに、ミネラルの量だけなら、実は緑茶のほうが多いんです。それでも夏に麦茶が選ばれるのは、やっぱり「ノンカフェインで水分補給に向いている」から。ミネラルは「ついでに少し摂れるおまけ」くらいに考えておくとよいですね。大量に汗をかいたときは、麦茶だけに頼らず、塩分を含む経口補水液なども上手に使いましょう。
ちなみに、私は麦茶が少し苦手です
最後に、私の本音を少しだけ。実は私、麦茶が少し苦手なんです。飲んだあと、なんだか喉が渇く感じがして……。
調べてみると、麦茶には脱水を招くような成分は入っていないので、「麦茶だから渇く」という理由は実はないようでした。きっと、後味や冷たさなど、私個人の感覚なのだと思います。
だから思うのは、無理に「定番」に合わせなくていいということ。水でも、ほかのノンカフェイン飲料でも、水分補給はちゃんとできます。「みんなが飲んでいるから」より、「自分が続けやすいもの」を選ぶのがいちばんです。

体が教えてくれる「サイン」に気づこう
水分が足りているかどうかは、体がちゃんとサインで教えてくれます。
- のどの渇き:渇きを感じた時点で、すでに少し不足ぎみ。渇く前の補給を
- 尿の色・量:濃い黄色で量が少ないときは、水分不足のサインかも。うすい黄色が目安
- むくみ・だるさ:巡りが滞っているサイン。動いて循環を
- 唇や肌の乾き:こまめな水分補給を
こうしたサインを、ときどき気にかけてあげるだけで、夏の不調はずいぶん防ぎやすくなります。
まとめ:飲んで、巡らせて、サインに気づく
今回のポイントをまとめます。
- 体の水分は、1日約2.5Lでイン・アウトのバランスをとっている
- 梅雨〜夏は、湿度・冷え・自律神経の乱れで「水が溜まりやすい」。原因は摂りすぎより「出せていない」こと
- だから「こまめに動いて巡らせる」ことが大切
- 飲み物は水・麦茶を基本に、こまめに少しずつ。大量発汗時は塩分も
- 麦茶が夏の定番なのは「ミネラル」より「ノンカフェイン」だから。合わなければ無理せず、自分に合うものでOK
- 体のサイン(のどの渇き・尿の色・むくみ)に気づいてあげる
暑い季節も、上手に水分と付き合って、元気に過ごしていきたいですね。じめじめした日こそ、ひと巡り体を動かして、心も体も軽やかに 🌿

記事内の情報は一般的な情報提供を目的としたものであり、診断や治療を目的とするものではありません。気分が悪い・水分がとれない・熱中症が疑われるなどの場合は、無理をせず医療機関にご相談ください。
執筆者:pon
管理栄養士。医療機関での勤務経験を活かし、減塩・食品表示など「体にやさしい食」をテーマに発信しています。ヨガ講師資格(RYT200)も持ち、食と心身のケアの両面から情報をお届けします。


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